By Sphera’s Editorial Team | 6月 21, 2022

危険な化学物質を保管、使用、または生産する企業にとって、適切な管理は従業員の生死に関わる重大な問題です。

国際石油ガス生産者協会(IOGP)の説明によると、プロセス安全管理とは「有害危険物質を扱うオペレーティングシステムとプロセスの完全性を管理するための規律ある枠組み」であり、危険物質やエネルギーの計画外の放出を防ぎ、重大な事故につながる可能性のある構造物の破損や安定性の喪失を防ぐことを目的としています。 IOGPによると、2007年~2017年の間に56件のプロセス安全イベントが発生し、128人が死亡しました。

テキサス州ウェストにあるウェスト肥料会社の例を挙げましょう。 2013年4月17日、同社の肥料製造施設での火災に緊急事態対応チームが出動しました。 米国化学物質安全性・有害性調査委員会(CSB)の報告によると、これはマグニチュード2.1の地震により発生したもので、15人が死亡、約200人が負傷しました。この爆発によって学校、養護施設、数百戸の住宅が破壊され、CSBによって「これまで調査された中で最も破壊的な事故」の1つとされました。 同委員会によると、40〜60トンの肥料用亜硝酸アンモニウムを適切に保管していれば爆発を防げたことが判明しました。 この爆発により人命が失われた他、約2億3,000万ドルの保険金、1,600万ドルの連邦災害支援金が支払われました。 ちなみに、少し前に起こったベイルート港での死亡事故も亜硝酸アンモニウムの爆発が原因でした。

プロセス安全管理とは?

プロセス安全管理(PSM)という言葉が注目されるようになったのは、安全な職場を作り、災害の原因となる「毒性、反応性、可燃性の液体や気体の予期せぬ放出」を防ぐことを目的とするOSHA規制が、危険な化学物質を適切に管理するようことを企業に求めているからです。 プロセス安全管理システムは通常、技術プラットフォーム、特定の手順、および管理フレームワークで構成されています。

PSMの意味合いが理解されるにつれて、他のバージョンも登場しました。 米国では、4つの柱に分類された20の要素からなる化学プロセス安全センター(CCPS)モデルが存在します。

その他のいくつかのモデルが世界中で使用されています。 たとえば、欧州連合ではセベソⅢ指令(2012/18/EU)が危険化学物質の保管や取扱に関するリスクを制限するためにPSMとして導入されています。 英国では大規模災害管理(COMAH)規則2015がPSMに該当します。 中東ではいくつかの国が安全管理システム(SMS)を選択しており、そこにPSMが組み込まれています。 オーストラリアでは、主に労働安全衛生法および危険物や主要な危険物施設に関する規制によってプロセス安全性が管理されています。 そして、AICHEは日本でもそうしたシステムの設計を支援しています。

プロセス安全と労働安全はどう違うのか?

石油ガス施設に関しては、プロセス安全管理は労働安全管理と混同されることが少なくありませんが、2つのシステムは予防しようとしている事故の規模によって区別されます。 プロセス安全管理は爆発などの大規模災害を防ぐことを目的としています。 一方、労働安全管理は転倒などのより個人レベルでの安全インシデントの防止を目的としています。 労働安全ハザードはより一般的ですが、多くの場合は小規模な介入によって対処できます。一方、プロセス安全ハザードは一般的にはより高度な解決策が必要です。 簡単に説明すると、プロセス安全は何をしているかに関連しており、労働安全はそれをどうやるかに関連しているということです。

プロセス安全管理に対処するために、以下のようなリスク調査が行われます。ハザードおよび操作性解析(HAZOP)防護層解析(LOPA)故障モード影響解析(FMEA)プロセスハザード解析(PHA)、およびセキュリティ脆弱性解析(SVA)など。

プロセス安全管理を実施する方法

プロセス安全管理は複雑であり、科学技術と管理ソリューションを融合させた多次元アプローチが必要です。 OSHAによると、プロセス安全管理プログラムには14の基本要素を含む必要があります。 簡単な概要を以下に示します。

  1. プロセス安全情報:スタッフは業務中に使用している化学物質およびツールの危険性に関する基本情報にアクセスできる必要があります。
  2. プロセスハザード解析:これにより組織がプロセスと運用を評価し、潜在的な危険を特定するのに役立ちます。 それでも、実際に施設内にどのような危険性があるのかを把握しない限り、組織は安全・危険管理を行うことはできません。
  3. 操作手順:作業は一貫した、十分に確立された安全プロトコルに従う必要があります。
  4. 火気使用許可:火気やその他の発火源を使用する作業には、許可と監視のための体系的なプロセスが必要です。
  5. 緊急時への備えと対応:組織は何か問題が発生した場合の対応プランを用意しておく必要があります。
  6. 機械的完全性:企業は機器の安全リスクの変化を追跡し、評価することが求められます。
  7. 操業開始前の安全審査:企業は有害性物質が職場に導入される前に、新規または変更された施設を徹底的に評価することが求められています。
  8. トレーニングの管理:従業員はすべての安全手順について適切な訓練を受け、継続的に再教育を受ける必要があります。
  9. 変更管理:プロセスを変更する場合、企業はその変更が施設全体のリスクにどのように影響を与えるかを体系的に見直す必要があります。
  10. インシデント調査:インシデントやニアミスが発生した場合、企業には何が起こったかを記録、追跡、調査、報告、分析を行うための体系的なプロセスが必要です。
  11. 請負業者の安全管理:請負業者と下請業者の安全はプロセス安全管理システムでカバーされなければなりません。
  12. コンプライアンス監査:組織は定期的な内部監査を実施し、手順やプロセスがコンプライアンスに準拠しているかを確認する必要があります。
  13. 従業員の関与:従業員は方針文書にアクセスし、承認し、サインオフすることができなければなりません。
  14. 企業秘密:従業員は安全衛生を確保するために、たとえ企業秘密であっても、材料とプロセスに関する徹底した文書化を行う必要があります。

注目すべきなのは、PSMが過去にごくまれにしか発生しなかった事象に焦点を当てていることです。 それらは今後も全く発生しないかもしれません。 しかし、万が一発生した場合は大惨事になることが少なくありません。 こうした確率の低い事象を理解するのは複雑で、コストがかかる場合もありますが、発生したときの結果は桁違いに深刻です。

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